更新情報はこちらから
Twitter

「勇気を持って海外で冒険しよう」後編

インタビュー

前回の続きより

(前回:「勇気を持って海外で冒険しよう」前編

 

 

アメリカの公衆衛生の課題

 

――アメリカでは公衆衛生に関する研究や教育はかなり進んでいますが、一方で足元の公衆衛生政策では疑問も感じます。格差の拡大などもありますが、例えばここボストンでは水道水に微量の鉛が混入しているなど、研究成果が実際に国民に直結していないように感じます。

 

確かにそうですね。アメリカは日本に比べて圧倒的に格差が拡大しています。

 

アメリカの格差はリーマンショック後に如実に拡大しています。

 

それがトランプ大統領の当選という形に現れていますし、トランプ大統領自身も格差の拡大からくる問題を移民の問題に転嫁しています。

 

今は確かにひどい状況ですが、このような状況は選挙によって一気に変わる可能性もあるのがアメリカです。

 

研究成果が実際に国民に直結していないという点で、格差について研究している私としてはこの20年間は非常にフラストレーションを感じていました。

 

しかし、我々の公衆衛生分野では研究成果を出し続けて世の中が変わるのをじっくり待つしかありません。

 

先ほど例に挙げた私のニュージーランド時代のタバコの研究の話と同様に時が来れば研究が取り上げられ、一気に世の中が変わるというのが私の経験です。

 

ロシア革命など社会の歴史を振り返ってみると、革命的な事象が起こる時にはたいていの人は期待していなかった事が多いと思います。

 

我々の研究者はそういう時に備えじっくり成果を出し続けるしかないと考えています。

 

 

Harvard Medical School 図書館

 

 

北欧型の公衆衛生政策に学べ

 

――カワチ先生が現在、公衆衛生政策で注目している国または政策は?

 

私の授業でも度々取り上げますが、北欧のスウェーデンやノルウェーです。

 

その分、税金が高いなどはありますが、リーマンショックにも巻きまれていない、社会的な支援も手厚い、寿命も高いなど丁度いい感じにやっていると思います。

 

日本ではどうやって育児などの家庭支援をしていくかが議論になりますが、その中で参考となるのがスウェーデンだと思います。

 

デイケアサービスなど育児支援がしっかりしていますね。

 

働く家族をサポートしない国では子育てできませんよね。

 

高齢化問題の根底は少子化問題です。

 

少子化問題の根底は働く家庭を支援できていない事だと思います。

 

スウェーデンはその逆のサイクルが起こっていて、働く家庭を支援するからみんなが安心して子供を産め、少子高齢化問題も進んでいません。

 

日本では幼稚園の入園願書提出に行列ができますが、スウェーデンでは誰でも最高約月1万円で幼稚園に通う事ができます。

 

政策も上流をたどっていって組まないとこういった問題はなかなか解決しないという事です。

 
 

 

――重労働なのに低賃金など働く環境にも問題があります。

 

保育園だけでなく介護の現場でも同じことが言われていますね。

 

介護の現場も家族に頼っている部分が多いと思うので、そういう所に国がしっかりお金を入れて支援を後押しすべきだと思います。

 

 

Harvard T.H. Chan School of Public Health外観

 

 

リーダーシップを発揮してカルチャーを変える

 

――それができないのは慢性的な財政赤字で自由な政策が組めないからでしょうか?

 

そういう風に思いこんじゃっている人が多いですが、私は違うと思います。

 

政治はリーダーシップですから、勇気をもって決断できるリーダーが必要です。

 

勇気をもった政治家が法律を変えたから文化が変わったという事例は歴史上たくさんあります。

 

私が禁煙運動に参加した時も国内の5割は反発していましたが、実際に法律ができると今では多くの人がそのよさに気付き、今では社会的規範としてしっかり定着しています。

 

つまり、文化が醸成してから法律を作るというのは本来、逆の考え方で、リーダーシップを発動して法律を作るから文化が変わるわけです。

 

スウェーデンでも育児休暇制度ができたから父親の育児休暇取得率が9割を超え、イクメンというカルチャーができたわけです(笑)

 

――なるほど。日本人の価値観に合わないと言っていても何も変わらないということですね。日本にはリーダーシップを発揮できる人がまだまだ少ないかもしれないですね。

 

日本の若者にはぜひそういったリーダーシップを発揮できる人材になって欲しいと思います。

 

これからは若い世代からそういった人が出てくることが必要だと思います。

 

そのためにはぜひ海外留学をおすすめしたいですね。

 

世界の色んな国々と日本を比較していく中で気付くことも多いはずです。

 

最近はハーバード大学で学ぶ日本人も少し増えてはきましたが、まだまだ台湾、韓国、中国、シンガポールなど他のアジア諸国と比べると少ないのが現状です。

 

他のアジアの学生は海外に関心が高く、熱意や活気も彼らの方があるように感じます。

 

しかしここ最近は日本の学生も変わりつつあるようにも感じています。

 

――最後に日本の学生に何か一言お願い致します。

 

英語をしっかり学んで、海外に出て冒険してくれとメッセージを送りたいと思います。

 

私は勇気をもって海外に出たわけでなく中学の時に親の仕事の都合で強制的に海外に出ましたが、ニュージーランドの学生たちも小さな国の中で常に外の国を意識して、海外に出て冒険したいという雰囲気をみんな持っていたように感じます。

 

それもあって私も今このような場所にいるのだと思います(笑)

 

――カワチ先生、本日は本当にお忙しいところお時間をとって頂き本当にありがとうございました。

 
 

インタビューアーあとがき

 

公衆衛生領域で最も有名な日本人と言っても過言ではないハーバードのカワチ先生にインタビューさせて頂きました!

 

初めはハーバード教授の肩書きにとてもビビってしまいましたが、実際会ってみるととてもダンディーでかっこよく、びっくりするくらい気さくで優しい先生でした!!

 

筆者はボストンでの留学期間中、ハーバード公衆衛生大学院でカワチ先生の授業に出席させていただきましたが、社会がどのように健康に関わっているのかを、いろんな研究や例え話を持ち出して興味深く授業をされておられ、学生みんなが授業に夢中になって聞いていたのがとても印象的でした。

 

もしカワチ先生の講義が気になる方がおられましたら「Harvard X」のオンライン講座で調べてみてください!

3+

コメント

タイトルとURLをコピーしました