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医大塾〜地方での塾経営への挑戦〜

コラム

「医大塾」インタビュー 

株式会社NOIE 会長 竹内翔祐さん

 

<医大塾>

佐賀大医学部生の竹内翔祐さんによって立ち上げられ、教師全員が佐賀大学医学部生で構成されている完全個別指導の学習塾。佐賀大、久留米大医学部医学科を始めとした6人の医学部合格者を輩出し、小学生から東大志望まで幅広い塾生を指導している。

 

医大塾を立ち上げたきっかけ

ー医大塾を立ち上げたきっかけを教えてもらえますか?

まず、地方では塾講師の質に疑問を感じることがありました。 大阪とか東京といった都会だと東京大学や京都大学といった大学出身の人が塾を開いているケースって多いと思うんですが、僕は長崎県佐世保市出身で、佐世保には中心から離れたところにひとつの大学がポツンとあるだけで、センター試験を 700 点以上取ったことのある大人が居ないように感じていました(笑)。

僕が通っていた佐世保北高校では、学校の中で TOP20、30 番の生徒が医学部に進学するレベルだったのですが、その中で東大や京大といった偏差値の高い大学出身の先生って居なかったんですよね。なおかつ、佐世保には高校生を指導する塾がそもそもありませんでしたし。ですから、生徒でお互いに教えあうしかない状況でした。

ー都市部と地方の教育の格差によって起こりうる状況ですね。

そうですね、一方で佐賀では佐世保と状況がよく似ているのですが、佐賀大学があり医学部生が居ました。佐世保の地域に医大生が居るような感じですね。佐賀ではすべての塾の中核を医大生が握っていました。僕も、とある小さい塾に勤めていたんですが、その時も面談からすべての教科の指導、さらに会計も含めてやっていたので、これはもう自分で塾運営ができるのではないかと感じたんです。

ですが、一人では不可能だったので、学園祭で僕がリーダーをした時に後輩の知り合いがざっと 100 人ほどできたのでその後輩に声を掛けました。 最初から上手くいくかどうかはわからないんで、しっかりと仕事をしてくれる後輩に背中を押されましたね。

開講 1 年目の時は塾生が慶応大学看護学科に合格しました。1 年目は医学部志望の生徒は居なかったんですが、今年は 6 人の塾生が医学部に合格したので、手応えを感じています。

株式会社 NOIE の1事業

ー医大塾は株式会社 NOIE の1事業ということでよろしいですか?

はい、そうです。最初は個人事業でやっていたのですが、初めて半年ほどで個人では回せる金額ではないとわかりました。あと、僕は医師国家試験予備校の TECOM の教科書の挿絵を描く仕事をしていたので、個人でお金をもらうよりも会社を経由した方がやりやすかったですね。塾の事業についても会社を経由したほうが税理的にも楽でしたし。 他にもデザインに関する仕事はしていますが、メインは主にこの 2 つだけです。

ーデザイン関係の仕事を多くされていると思うんですがデザインに関してはご自身で学ばれていたのですか?

少し複雑なのですが、昔はもともとデザインが専門でした。ちなみにデザインのコンクールでは世界一4 回と日本一を17、18 回とっています。

ーすごいですね。その影響で医学系統のデザイン描写のお仕事をされているんですね。

はい、そうです。例えば、「右冠動脈2番が詰まっているからステントを挿入している図を描いてください、gif 方式で 300dpi、背景透過でお願いします」と言われても医者もデザイナーもちんぷんかんぷんなんですよ。何回も何回もやり取りしてイラストを作っていたそうです。そこでデザインもできるし医学の知識もある僕が実際に絵を描いていたのですが、最近は手が回らなくなるほどの量が来るので、デザイナーに翻訳する仕事をしています。僕がざっくり下書きだけを書いて、デザイナーさんにこれを綺麗に書いてくださいといった感じですね。

塾生の志望校

ー医大塾を利用している塾生は佐賀大医学部を目指す人が多いのですか?

ほかの塾と比べると医学部志望率は高いと思います。今、全体で 70 人くらいの塾生が在籍しているのですが、はっきりと医学部を目指すと言っている塾生は 20 人くらいです。最近 は、医学部志望の塾生と医学部志望以外の塾生とで校舎を分けたんですよ。

裏側を言いますと、私の経験上、医学部志望の子とそれ以外の子では、求める先生のタイプが違いますね。医学部志望の子は、癖の強い感じで「我は強いけどこの先生すごい!」っていう先生のほうが向いていたりします。医学部志望以外の子は、逆にこういった先生はマイナスになります。もっと部活などをがっつりやっている普通の先生のほうが向いていますね。

ー先生を変えているとのことですが、医学部志望の塾生と医学部志望以外の塾生で教え方を変えていますか?

基本的に教え方は変えていません。なぜなら、地方国公立医学部医学科などは、凡人がめちゃくちゃ努力してぎりぎり届くところだと思います。突拍子のない問題も出ませんし、推薦のルートもありますし、センター試験も90%なくても届くじゃないですか。なので、指導において地方国立医学部の特有の方法はないというのが結論です。普通の受験勉強の方法で量をこなすこと、例えば青チャートを2周しっかりやることを塾生に伝えることがすべてだと思います。基本姿勢としては、机を用意して、参考書を用意して、いいコピー機用意して、いくらでもコピーしていいし、いくらでも質問していいから自分で解いてくださいっといった感じです。基本的には自習をさせている感じですね。

ーつまり学校の教材などをつかって自習して、わからない所を質問するといった感じですね?

そうですね。さらに、地方には「このやり方が一番で自分たちもこのやり方で受験を合格してきた」といえる先生がいないんですよ。ほかの塾だと、「人から聞いていたらこんな感じらしい」 とは伝わるのですが、やる気につながらないと思います。

「参考書 2 周もしんどいなぁ」と塾生は思うんですが、「この量をこなすしかない、自分たちもそうやって受験を合格してきた、その量をこなしていない人は落ちた」と実体験から具体的に僕らが話すことができるだけでも、医大塾の価値が地方ではあると思います。 僕たちの仕事は、何よりも医学部に合格した背中を見せることです。それが一番強いし、唯一無二だと思います。

また医大塾には、「甲子園に行ったけど医学部に入った」「空手で全国三位だったけど医学部現役で合格した」など色んな経歴を持った先生が多くいます。逆にそういう先生を多く雇うことで、部活と勉強は両立できることを塾生に伝えるともう無敵ですね(笑)。 塾生の親御さんも喜んでくれて、無理やりでも塾に来させてこようとしてくれますね(笑)。

塾生を奮起させる取り組み

ー医大塾で実践している塾生を奮起させる取り組みなどありますか?

僕も多くの生徒に面接してきましたが、面接のときにまず生徒に聞くんです。「僕がもし社長だったらどういう人を雇いたいと思う?」と。「仕事とは基本的に面白くないもので、同じ給料で面白くないことをこなせる人間が欲しいんだよ。もし、ここに 2 人の人間がいて 10 分間の面接をします。これだけでどちらが仕事できるか、わかると思う?わからないよね。面接の中ではどれだけでも自分を偽れるから、何が証拠になると思う?それは、テストの点数だよね。」

僕も実は勉強が大嫌いで、高校の時からなんでこんなに勉強しなければいけないんだと思っていました。「テストは、どれだけ面白くないことができるかを数値化したもの」と中高どっちかの先生がおっしゃっていて、あとから納得しました。

僕も大学数学突破の極意として「同じ問題集を 2 周すること」だと思っています。中学、高校受験の問題集って非常にバラバラで、大学受験の問題集ってかなり決まってくるというか1つの教科で多くても3冊ほどだと思うんですよ。急にやるべきことが決まってくるんですね。僕はその点、大学受験は質よりまずは量だと思っています。つまり、どれだけレールに乗ったものをやれるかですよね。これは、社会に出た時の仕事にかなり当てはまると思います。やりたくない作業を無限にやらされる苦痛といいますか。

ー僕も医学部受験を経験しましたが、本当にどれだけきついことをするかと意識していた記憶があります。

僕も会社をやっていて思うんですけど、勉強と似ているところは多いと思います。なので、僕は仕事嫌いです(笑)。 やっぱり、まじめに勉強していた後輩を雇うと、めちゃくちゃ仕事ができるんですね。それは、 もうやりたくないことをやるのに慣れているからだと思います。

なので、面談の話に戻りますと、ぼくは面談に来た生徒さんに「もう君はこれから勉強が面白くなることはないし、ゲームのほうが面白いに決まってる。優秀な人たちが毎晩寝ずに考えて、莫大な金額を注いで完成させたものだし、そちらのほうが面白いに決まっている。ゲームより勉強のほうが面白いという言い方はまやかしだし、いかに勉強という面白くないことをこなすかが社会に出て役に立つかにつながるんだよ。テストは奴隷度を数値化したもので、君がほかに何かの才能が有って誰かの下につく必要がなければ今すぐ勉強をやめればいい。ただ、俺は絵のコンクールで36万人中の 1 位になったけど、勉強の世界で自分を証明した。勉強で自分を証明するのがどれだけ楽か。本当に勉強以外の才能で食っていきたいなら俺以上の才能を見せてみろ」といいますね。っていうと、生徒さんは黙りますね(笑)。 そう考えると僕らはプロ勉強選手じゃないですか。いかにプロ勉強選手になるのがほかの世界で存在感を示すより楽か。それを伝えています。親も大喜びです(笑)。

ー指導において、医大塾の独自での取り組みはないですか?

ないですね(笑)。ただ、推薦対策は万全だと思います。佐賀大は珍しく、推薦で 45 人/100 人とるんで、かなり多いんですね。推薦で合格するにあたって、どういう受け答えをすればいいかなど小論文や面接対策は自信がありますね。

他学部生の雇用

ー医大塾は、現在全員佐賀大医学部生で構成されていますがほかの学部生を雇うことなど考えてられますか?

全く考えていないですね。飲み会などのお小遣い稼ぎをしているわけではありませんし、一緒に会社を運営するメンバーでもあるので、そこは崩さないようにしていますね。

塾運営をして、良かった事

ー塾運営をして、よかったと思うことはありますか?

中学高校からそんなに金銭的に裕福ではない家庭のお子さんを医者にして、医学部に入ってから僕のような学園祭でリーダーをしていた人や部活もがっつりしていた先輩に給料で雇われると深い関係ができていくんですよね。そういった仲間が地方で集まることで何かできるんじゃないかと思います。仲間を養成するといった感じです。人材発掘ビジネスといった感じでしょうか。

このシステムが 10 年、20 年とうまく回れば塾としての効果だけでなく、自分の身にも何らかの利益が回ってくると考えています。これが塾を運営する僕の真の狙いですね。 地方で医学生 20 人ほどが1つの意思をもっている団体がないのですし、地方で医大生が集うことのパワーを感じています。

ー地方では学生で集まることも珍しいですもんね。

学生団体なども多くありますけど、そこに属している人は癖が強い。自分が自分がといった感じで喋りたがるじゃないですか。 あくまでも僕の後輩は塾講師として給料で雇っているので、部活と飲み会を愛する一般的な医大生なんです(笑)。そういった団体は珍しいと思いますね。癖強くない普通の学生をどう集めるかが一番大事だと思います。

ーほかにもよかったと思うことはありますか?

今年だとギリギリ医学部に合格するかどうかといった子を推薦で合格させたりしたんですね。その時に親御さんや本人から「ありがとうございました。先生たちのおかげです。」と言われると「あれ?なんかいいことしたのかな」っていう気分にはなりますよね笑。やりがいを感じています。

塾運営をして、辛かった事

ーでは、逆にきつかったことはありますか?

一時期、会社の運営、学園祭の仕事、学校の勉強を両立しつつ、ポリクリをまわらなければならないことがありました。その時は本当に地獄でしたね。2,3 週間の間は 2 時間睡眠でしたね。

学園祭は僕が再開させたのですが、田舎で DJ とかイベンターをやりつつイベントの運営の方法を勉強していました。また、学園祭のパンフレットも三晩徹夜で完成させました(笑)。やはり学園祭の運営がなによりもしんどかったですね。

僕は、自分のことを「双極3型障害」と言 っているのですが、寝なくていいといった状況を自分で作ることができるんですよね(笑)。昔から修羅場を乗り越えてきたからだと思います。

将来この経験をどう生かすか

ー将来は、どう医大塾の経験を生かしたいと考えているんですか?

継続することが大事だと思います。医大塾をあと何十年も回していくことでそれが佐賀での僕の力になるのでなないかなと思っていますね。店舗数を増やしてゆくゆくは福岡、大阪、東京進出とかではなくて、佐賀大学 OB の僕が佐賀でこの塾をやっていることに大きな意味があると思っています。他のところで出張してしまうとただの塾になりますし、あまり効果がないといいますか、拡大というよりも佐賀で地道に続けていくのが大事だと思います。

今後のビジョン

ー将来どういった医師になりたいとか考えていらっしゃれば教えてください。

とりあえず初期研修 2 年間はして、もしも研修中に会社が大きくなれば法学部に行こうかなと思っています。

ーなぜ法学部へ行こうと思われるんですか?

もっとさらに上を目指そうとすると僕よりもデザインの才能がある人はたくさん居ますし、僕よりも医学的にすごい人ももちろんたくさん居ます。ただ、僕のレベルまでデザインができて医学部レベルの大学に来ている人は今のところ聞いたことがないですね。ここにさらに司法の免許が入ると 1 位を名乗れるのではないかなって思っています。1 教科で満点をとるよりも複数の教科で高いレベルを目指したいですね。実は医学部にもそのノリで来ました(笑)。

ー医師はどこの世界においても必要とされる業種ですもんね。

そうですね。弁護士さんだとお世話になる人って限られますけど、医師はそうではないじゃないですか。スティーブ・ジョブズも死ぬわけで、自分の活動に医者を帯同させるのはかなりの資金がかかると思うんですけどそれなら自分がなろうと思いましたね。医療は必ず必要なものなので。

なので、僕の塾に来て医学部志望になる塾生って多いんですよ(笑)。とりあえず夢がないなら医学部行っとけよっていう感じですね。高校生の時点で夢があっても、学生しかまだ経験したことないので、必ず変わるものです。その点でも医学部に進学すれば楽だと思いますね。おかげで、「あの医大塾に行けば、子供が医学部志望になる」といった口コミが広がって、お子さんを医師にしたい開業医の方が来られたりします(笑)。

さらに塾では、あえて塾生の前で学園祭などの話をすることで「医学部って楽しいんだな」と塾生が思ってくれるわけです。自分たちも学生を楽しんでいる自信があるのでその背中を見せるのが本当の使命だと思っています。

 

 

【編集後記】

学生の期間に学習塾を運営し、さらには実績も出す。本当にスペックの高い方だなと感じました。初めてのインタビューでかなり緊張していた私ですが、インタビューをしていることを途中から忘れさせるほどフランクに話して頂きました。

私も普段塾でアルバイトをしており、どうすればもっと生徒に勉強に興味を持ってワークを解いてもらうかと試行錯誤する毎日でした。しかし、竹内さんの教育理念を聞いて考えが少し変わったような気がします。「社会で一番自分の能力を示す一番の近道は勉強すること」。デザインのコンクールで何度も世界一を受賞された竹内さんの言葉だからこそ重みが違います。勉強は嫌に決まっている。嫌なことをどれだけこなすかを数値化したものがテスト。確かに私の大学受験を振り返っても勉強を楽しくしていた記憶は無かったかもしれません。しかし、スポーツや芸術で結果を残すことがどれだけ難しいかが竹内さんのお話から伝わってきました。今まで中学受験、大学受験と毎日あまり考えることなく漠然と勉強していた私ですが、改めて過去を振り返る良い機会になったと思います。

 
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