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「アカデミアとビジネスの両輪で医療にイノベーションを!」 前編

原 正彦先生

原 正彦先生

 

循環器内科専門医、認定内科医、日本医師会認定産業医
株式会社mediVR代表取締役
株式会社Research Mind代表取締役
日本臨床研究学会代表理事
島根大学 地域包括ケア教育研究センター 客員教授

 

 

キャリア

 

2005年島根大学医学部卒業。神戸赤十字病院にて初期研修修了後、大阪労災病院にて後期研修。2010年より大阪大学医学部附属病院で循環器内科に所属し、2011年に大阪大学大学院医学系研究科に進学し2015年に学位取得。その後同大未来医療開発部へ。2016年より日本臨床研究学会代表理事。
循環器系では世界で最も権威のある2つの学会、American Heart Association(以下、AHA)とAmerican College of Cardiology(以下、ACC)で世界の若手研究者Top 5に3年連続4度選出された。他にもOriginal Research Paper 58編、Case Report 7編、Letter 3編の実績。著書「臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意」(http://amzn.to/2ixR2cu)はシリーズ累計1万部以上の医学書ベストセラー。

 

 

記事紹介

 

臨床医から研究医、そして経営者へと様々な分野に活動の幅を広げる原正彦医師。臨床研究では循環器の世界最高峰の学会で3年連続4度の受賞歴を誇り、その後は臨床研究学会を立ち上げ、日本のデータをもって世界で戦う方法を指導している。経営者としても自身で起業したmediVRが経済産業省主催のジャパンヘルスケアビジネスコンテスト2018でグランプリを獲得。日本臨床研究学会とmediVR両方がそれぞれ経済産業省のベンチャー支援プログラム「J-Startup」(日本を牽引する企業を育てるための特待企業制度)に選出された(日本臨床研究学会は認定サポート法人として選出)。
そんな稀代のイノベーター、原先生から既存のキャリアに縛られないパラレルキャリアな生き方について聞いてきました!

 

左:mediVR CTOの榛葉氏 右:原正彦先生

 

 

パラレルキャリアという選択

 

――原先生、この度はインタビュー企画にご参加いただき、誠にありがとうございます。まずは現在の先生のお立場について簡単に教えて頂いてもよろしいでしょうか?

 

はい。まず、今までキャリアパスというと一つの道を選ぶのが当たり前と思われていましたが、僕は何本もの道を走らせて、パラレルキャリアという選択をしています。こういうやり方もあるんだなということで僕の話を参考にしてもらえればと思います。

僕はアカデミアでは島根大学地域包括ケア教育研究センター客員教授、日本臨床研究学会の代表理事を、そしてビジネスでは株式会社mediVRや株式会社Research Mindの代表取締役をしていて、他にもいくつかの会社、そして診療所も持っています。

 

 

臨床研究で世界的学会へ

 

American College of Cardiologyにて

 

――活躍の場がとても多くの分野にまたがっていますね。たくさんお聞きしたい事がありますが、まずはアカデミアの側面からお話を伺いたいと思います。原先生と言えば日本臨床研究学会を立ち上げ、著書「臨床研究立ち上げから英語論文まで最速最短で行うための極意」もシリーズ累計1万部突破と医学書でベストセラーとなるなど有名ですが、もともと臨床研究という道に入ったきっかけは何だったのでしょうか?

 

僕が最初に臨床研究を始めたのは初期研修医の頃でした。単純に「教科書に書いているものが間違えているのではないか」と疑問に思ったことがきっかけで、それを証明するためにデータを集めて検証しようと思いました。

思い返せば、もともと教科書に書いている内容を鵜呑みにしないところがあって、中学生や高校生の時から教科書や問題集の間違えを先生に指摘したりしていました(笑)。医学においてはその手段が「臨床研究」だったわけです。そういった感じで臨床研究の道に入ってはみたものの、最初は臨床研究のノウハウが全然なかったので、初期研修医時代は論文という形にすることができませんでした。それでもめげずに独学で学び続けて、後期研修の時になんとかアウトプットに結び付けることができました。

 

――臨床研究は臨床医にとって必要なスキルだと思いますか?

 

 海外だと臨床研究(原著論文)の経験がないと専門医の受験資格が与えられない診療科が存在するなど、臨床研究は臨床医にとって必須のスキルとなりつつあります。日本でも徐々にその傾向が表れつつありますね。

しかし、そういった世の流れを別にしても、臨床研究は医師の臨床能力を上げる手段として有用ですし、医師の能力を客観的に証明できる手法でもあるので興味があれば是非おすすめしたいと思います。

 武道や芸能の世界では修行の過程を表す「守破離(しゅはり)」という言葉があります。「守」は指導者の教えを守る段階、「破」は自分独自の工夫をし、指導者の話になかった事を試してみる段階、「離」は指導者の下を離れ、自分自身で学んだ内容をさらに発展させる段階で、一人前になるためにはこのようなステップを経ていく事が重要とされています。

 臨床医のキャリア形成にも、この「守破離」という過程が重要で、臨床研究はこの守破離の「破」にあたるわけです。つまり、ガイドライン通りに医療を実践するのが「守」だとすれば、自らエビデンスを作って「破」に達する事で初めて本物の臨床医になれるという事です。

臨床研究とはそもそも自分の臨床上の疑問を確認するための作業ですので、臨床研究を通してエビデンスの客観的評価能力が養われ、転じて臨床能力の向上に繋がるわけです。

 

American Heart Association 2015年総会YIA: Young Investigators Award授賞式

 

――実際に原先生は世界で最も権威のある学会の一つであるAHA(American Heart Association)やACC(American College of Cardiology)を始めとし、国内外で数々の賞を受賞されています。日本から世界で戦えるような臨床研究を行うにはどのようなノウハウが必要なのでしょうか?

 

 僕がいつも言っているのは日本からでも十分に世界で通用する臨床研究が行えるという事です。確かにいくつかコツがありますが、コツを理解すれば誰でも世界を舞台に活躍する事が可能です。臨床研究をデザインし、データを集める際に僕が意識しているのは以下の「FINER」という要素です。

 

臨床研究のデザインに重要な「FINER」

 

これらの要素が臨床研究を行う上で重要な要素で、これらの要素に、「World Trend」「World Niche」「Strength of Japan」の3つのキーワードを加えると、より自分の土俵で世界と戦える臨床研究を行うことができると思います。

 

日本のデータで世界で戦うための3つの要素

 

例えば、僕がAHAで初めて受賞した演題は傾向スコアマッチングという臨床研究分野における「World Trend」、降圧薬の一種であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の効果測定という「World Niche」、長期フォローという「Strength of Japan」が掛け合わされていました。他にも画像診断やバイオマーカーなども日本の強みとしてあると思いますので、それらを取り入れても面白いと思いますよ。

 

――1回目のAHAの受賞でどのような事を意識されたのかもう少し具体的に教えて頂けますでしょうか?

 

僕が行ったのはレニンアンジオテンシンアルドステロン系(RAS)阻害薬という降圧薬の種類の中の、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬とARBという2種類の薬剤の効果を比較した研究でした。

心筋梗塞後の二次予防の領域において米国のガイドラインでは薬価も低くエビデンスの豊富なACE阻害薬が第一選択薬の降圧薬となっていましたが、日本ではACE阻害薬に咳という副作用があるために、ARBが多く使われているという世界でも非常に稀な独特の環境がありました。つまり、ACE阻害薬とARBの効果の比較検証を行えるようなデータが米国等世界的には存在せず、日本のデータを用いてしか検証ができなかったというわけです。

実際に検証してみた結果はACE阻害薬を使用した患者群での生存率の方がARBを使用した患者群よりもよかったのですが、同じRAS阻害薬という枠組みの中で2剤の効果の検証がなされていなかったため、そこが評価されたと考えています。

そういった日本の特殊な環境を活かした「World Niche」な分野において、観察研究の結果をRCT(ランダム化比較研究)のように解析する傾向スコアマッチングという「World Trend」にのった形の手法を使ったというわけです。

2013年当時では傾向スコアマッチングという統計手法は新しいものでしたが、知り合いの統計家にも意見を聞いたり、海外のサイトで勉強したりして傾向スコアマッチングを用いた解析を誰でも使えるようにプログラムを組んで販売したりもしました。

 

――そういったノウハウを蓄積する原先生が代表理事をつとめる日本臨床研究学会では臨床医にどのような支援を行っているのでしょうか?

 

「日本から世界に出て勝負をする医師の支援」を学会の目的として掲げ、これまで多くの先生方の臨床研究をサポートしてきました。10案件に1つくらいは製薬企業等からスポンサーシップとして外部資金を取ってくる事で学会を運営しています。

 2019年5月末時点で日本臨床研究学会では合計26編の英語論文をパブリッシュし、現在も10個程度の研究プロジェクトが進行中です。

 

後編へつづく

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